1997-09-11 更新
目次だんだんと内容を拡充していきます。ご期待ください。
近年、情報の電子化(ディジタル化)のスピードには目を見はるものがある。図書館でも蔵書の索引は「図書索引カード」を手でめくって調べる方式からコンピュータを使用して「オンライン」で検索する方式に移行しているところがほとんどであろう。さらに、コンピュータのネットワークが整備されてきたので、ネットワーク上で他の図書館の情報を検索することも容易になっている。たとえば http://kuee2.kuee.kyoto-u.ac.jp/library/opac.html というインターネットアドレスに接続してみよう。ここからは目的の図書や雑誌がどこに存在するかをオンラインで調べることができる。本学でも昨年(1996年)10月から学内LANの運用が開始され、インターネットが活用できるようになった。研究室に居ながらにしてこれらのサービスを受けることができる訳である。(自宅からダイヤルアップで本学のコンピュータに接続すれば、自宅の自分の部屋から同じことができる。) あるテーマについて調べようとするときには、図書館のレファレンスサービスを利用することが多い[1]。今流の情報検索の方法はインターネットを使うことである。ネット上で公開されている情報を「検索エンジン」と呼ばれるソフトウェアを使って調べることができる[2]。すなわち、キーワードを含むカテゴリーやホームページを効率よく検索できる。たとえば、http://www.freeality.com/, http://www.ingrid.org/w3conf-bof/search.html, http://www.bekkoame.or.jp/~asaisan/ のようなサイトにアクセスすると複数の検索エンジンを使うことができて、便利である。
インターネットで繋がれた世界中のコンピュータには膨大な情報が蓄積されている。この情報群が巨大な「図書館」を構成していると見なすことができるかも知れない。図書館も時代とともに変化していかなければならない。「電子図書館」(たとえば文部省学術情報センターが開設している「電子図書館 (http://www.nacsis.ac.jp/els/els-j.html)」など)に代表される未来の図書館のあり方については参考文献[3, 4]を参照するとよい。興味のある人は検索エンジンで「電子図書館」について調べてみることをお勧めする。
このように、今や自分の部屋から世界のあらゆる情報にアクセスできる時代になってきた。大いに活用したいものである。ただし、インターネットで集めた情報の真偽や質を判断して取捨選択し、それを活用するのは自分の責任であることを肝に銘じておきたい。
なお、本稿で紹介したインターネットのアドレスは、筆者のホームページ(http://172.16.34.17/ksuzuki-j.htm)からも辿ることができるので、学内LANからアクセスしてもらいたい。
参考文献:[1] 藤田節子, "自分でできる情報探索" (ちくま新書 109), 筑摩書房(東京, 1997), [2] 奥乃博, "インターネット活用術" (岩波科学ライブラリー44), 岩波書店(東京, 1996), [3] 長尾真, "電子図書館" (岩波科学ライブラリー15), 岩波書店 (東京, 1994), [4] 長尾真, "NHK人間大学 マルチメディア21世紀の見取り図", 日本放送出版協会 (東京, 1997)
「パソコンは難しいものだ」という考えが一般的であったのが、昨年の「Windows 95」の発売以来、「誰にでも簡単にすぐに使えます」とイメージが浸透したのだろうか、パソコンの販売が伸びているという。テレビでも「梱包を解いてから、数時間でインターネットの画面を見ていました」とか「始めてから1日でホームページを作成しました」といった類のコマーシャルをどんどん流してイメージの拡大に努めている。それはそれで大変結構なことだと思う。
●どのパソコンを購入するか
このような背景があって、最近私のところに「パソコンを購入したいのですが、どのパソコンが良いでしょうか」といった質問が来るようになった。私が大学で「コンピュータ」を教えているためのようだ。実際、家庭でもそれぞれがパソコンを購入する理由があるらしい。たとえば、父親は会社でパソコンを使わなくてはいけなくなってきたので、その「練習」のためにパソコンが必要だし、子供たちは学校にパソコンが導入され、授業でパソコンをやることになったので、その「お勉強」のために親がパソコンを買い与えるといった具合である。以前と比べて価格が下がってきているとはいえ、まだまだ高価なパソコンを購入するのだから、最適な機種を選定しようとするのは当然だろう。
パソコンを購入する際に一番大事なのは、パソコンで何をやりたいのかをはっきりさせておくことだろう。「使用目的」によって最適な機種は決まってくる。ワープロで文書を作成したいのか、表計算ソフトで金銭管理をしたいのか、パソコン通信をしたいのか、お絵かきソフトで絵を描きたいのか、音楽ソフトで作曲や演奏をしたいのか、CAD ソフトでデザインや設計をしたいのか、はたまた科学技術計算やプログラミングをしたいのか、あるいは最近はやりのインターネット・サーフィンをしたいのか。パソコンならば適切なハードウェア(本体および周辺機器)とソフトウェアを取りそろえれば、いずれも可能である。たとえば、パソコンでやりたいことが文書作成だけだったとしよう。この場合、最適な機種はパソコンではなく、「ワープロ専用機」かもしれない。(ソフトウェアは常に更新されるので、最新のソフトウェアを使えるパソコンのワープロのほうが、自分にぴったりのワープロを探すのにもよいとは思うが、「ワープロ専用機」を使っている人はそのまま同型の機種を使い続けるのが自然だろう。)また、「Windows 機と Mac(Macintosh) とどちらを買ったらよいですか」との質問に対しても、答えの基準は「何をやりたいか」になる。現状ではシェアの面からは圧倒的に Windows 機が有利であるが、Mac は Mac 独特の優れたコンセプトにより設計されているので、Mac にも捨てがたい面がある。特に画像、映像、デザイン、出版、音楽などの分野では Mac の独壇場になっている場合もある。Windows 機を選んだ場合には、Windows 対応のソフトウェアには原則的に機種依存性はないので、どの会社のパソコンを選んでもかまわない。(最近ではパソコンの部品は海外調達が一般的になってきて、パソコン製造会社は実質上組立だけを日本で行うところも出てきている。)ひと頃、日本のパソコンの半分以上のシェアを誇っていた NEC もキーボードの違いと 3.5 インチフロッピーディスクのフォーマット形式の違いを除いては、ユーザーにとって DOS/V 機(IBM 互換機)との実質的な相違は無くなってしまった。(NEC の最近の機種ではフロッピーディスクの違いの問題は解決されてしまった。DOS/V 機の陣営でも外国から直接本体を輸入しているメーカーを除けば、NEC の 3.5 インチフロッピーディスクのフォーマット形式でも使えるようになっている。)
●パソコンをいつ購入するか
「パソコンは次々と新しい機種が発売されるのですが、パソコンを購入する最善の時期はいつでしょうか」と聞かれる。確かに、パソコンは新機能を盛り込んだ新しい機種が安い値段でどんどん発売され、1年も経てば古い機種になってしまうという世代交代の早い商品である。もう少し待っていればもっとよい機種が発売されるのではないかと期待して待っているか、思い切って現時点で購入するかの選択である。私は、すぐに購入するのがよいと思う。「思い立ったが吉日」という句がパソコン購入にも当てはまる。パソコンを購入したいのだから何かパソコンでやりたいことがあるはずである。待っていてはいつまで経ってもやりたいことをやることはできない。私がボーナスをつぎ込んで個人でパソコンを購入したのは今から10年ほど前のことである。大学生協の「安売りフェアー」で PC9801VX2, ディスプレーとプリンターを購入した。40万円以上した。今なら数10倍以上の能力のパソコンが20万円台で手にはいる。しかし、損をしたとは思っていない。この10年の間にパソコンを活用できたことで元手は十分に取っていると感じるからである。実際わが家では PC9801VX2 はワープロや家計簿として使用されている現役機種である。
●どのソフトウェアを使うか
パソコン本体(ハードウェア)の新製品登場のスピードにも増して、バージョン・アップのスピードが速いのがソフトウェアである。あれもできる、こんなこともできるとソフトウェアの機能はどんどん増加していく。どんどん便利になるのは結構だが、困った問題も起きる。パソコンの基本ソフトウェアである OS (オペレーティング・システム)に変更が加えられる時には特に顕著に現れる。下手をすると、今まで使用していたソフトウェアをすべて買い直さなければならないといったことになりかねない。こんな場合の賢い対処の仕方は、古い人間と思われようが、「どうせ、あっしは古い人間でござんす」とぶつぶつ呟いて、現在使用しているソフトウェアに執着することである。どのみち、ソフトウェアの初期のバージョンにはバグ(ソフトウェアなどの不具合)が付き物であるから、「こなれる」まで待つくらいの気持ちを持つほうがよい。さらに、一つのソフトウェアを徹底的に使いこなせば、他の同種のソフトウェアの使い方は自ずと推測がつくというおまけも付いて来るかもしれない。ソフトウェアを買ったお金の元を取るつもりで、充分に使い切ることが肝心だろう。
私の例を挙げて恐縮だが、私は商用ネット NIFTY-Serve の会員でパソコン通信を利用している。パソコン通信用のソフトウェアには市販のもの、フリーソフトウェア(無料で使用できるソフトウェア)、シェアウェア(試用して気に入ったら、若干の使用料を支払う形式のソフトウェア)などたくさんの種類がある。NIFTY-Serve では Windows 用のソフトウェア(Nifty Manager)を無料で配布している。しかし、私は今でも通信ソフトウェアは DOS 上のフリーソフトウェア(WTERM)を使っている。その理由は Windows 上のソフトウェアよりも直接的で、しかもリスポンスが早い(ソフトウェアが軽いと表現する)からである。正確に測定したわけではないが、簡単な電子メールを送るには DOS 上の WTERM ではほとんど1分以内で終了するのに対して、Windows 上の Nifty Manager では2倍以上の時間が必要であるように感じる。NIFTY-Serve のような商用ネットでは通信時間は料金にただちに跳ね返ってくる。したがって、私は少なくとも当分の間、パソコン通信は DOS 上で行うつもりである。
●パソコン使用上の注意
パソコンをめでたく購入したとしよう。パソコンと周辺機器を接続して電源を入れるわけだが、ちょっと待ってほしい。ここで、待ったをかけたのは、電源を入れる前に調べておいてほしいことがあるからだ。それは正しい終了の仕方を知っているかということである。また、パソコンが突然動かなくなってしまったら、どうするのか。その対処方法を知ってから、電源を入れてほしいのだ。(最近ではかなり安定してきたとはいえ、パソコンはデリケートな機器でしばしばハングアップしてすべてのキー入力やマウスのクリックを受け付けなくなることがある。)どうしようもなくなったら、もちろん電源を切る以外に方法はないのだが、それは最後の手段である。へたをするとハードディスクを壊してしまう危険性があることを承知してほしい。リセットボタン(またはスイッチ)があるDOS 系のパソコンでは電源を切る前にリセットボタンを押してみる。(もちろんこの方法でも100パーセント安全とは言い切れない。)リセットボタンがない DOS/V 機ではソフト的にリセットをかけることができる。すなわち [Ctrl] キーと [Alt] キーを押しながら [Delete] キーを押す。これでリセットがかかるはずである。最近の Mac にもハード的なリセットボタンがない機種があるが、この場合もソフトウェア的にリセットをかけることができる。たとえば [option] キーと [command] キーとを押しながら [esc] キーを押してみよう。うまくリセットがかかればメデタシ、メデタシである。
●文書データの使い回し
Macintosh のファイルシステムは DOS 系のものと異なる。Mac で作成したファイルを DOS 系のファイルに変換する方法(およびその逆)は文献[1]を参照してほしい。ただし、この文献は多少古い。最近では両者の変換はかなり簡単になっていることを付け加えておく。
DOS 系のワープロソフトを使用する場合にも注意する点はある。たとえば「これは文書ファイルです。」という文章を MS-WORKS で作成して、ファイルに保存し、それをエディターでディスプレーに表示させてみよう。すると、ほとんど解読不能な記号や文字になってしまう。(エディターは、ファイルの内容をすべて文字コードだと解釈して表示するので、こうなってしまう。)MS-WORKS はそれでもまだ「お行儀がよい」ので、われわれが解読できる部分として「これは文書ファイルです。」という文字列がそのままの形で残されている。ただし、その前後に解読不能な部分が付加されてしまうのだ。(この判読不可能な部分には、文書のフォーマットとかフォントの情報が埋め込まれている。)このため、一般的には、ワープロで作成した文書には他のワープロで作成した文書と互換性がない。もし、他のワープロに特有の形式で保存した文書をどうしても使いたい場合には「変換ソフトウェア(コンバータ)」で文書を変換する必要がある。したがって、いろいろなワープロで文書を使い回すには、すべてのワープロに対応した「共通語」で文書を保存しておけばよいことになる。この「共通語」が「文字ファイル」である。現在お使いのワープロで「保存形式」として「文字ファイル」があることを確かめてほしい。なお、ワープロソフトによっては、文字ファイルを「テキストファイル」とか「アスキー(ASCII)ファイル」と表現している場合もある。
●表計算、データベースの場合
上で述べたように文書ファイルの共通のファイル形式は「テキストファイル」だが、表計算ソフトウェアやデータベースの「共通語」は値がコンマで区切られている「CSV(Comma Separated Values) 形式」である。ただし、多くの場合、この形式で共有できるのは、数値データと文字列データである。したがって、表計算ソフトで重要な役割を果たす数式は CSV 形式では保存されないことに注意する。また、一部のソフトウェアでは、「空白」で区切られた形式を受け付ける場合もある。このときには保存の形式を「テキスト形式」と呼んでいる。
●画像の場合
画像のデータ形式は戦国時代である。したがって、画像のファイル形式を変換するソフトウェアを利用する必要がある。とはいえ、ただ単に画像を見るだけなら、いろいろな Viewer(閲覧ソフトウェア)が出まわっていて、多くのファイル形式をサポートしているので問題はない。また、Windows 時代になって、ビット・マップ(bmp) 形式が事実上の標準になったので、これで全国統一ができつつあるようである。詳しくは文献 [2] を参照されたい。
●ファイルの圧縮・変換について
必要がない場合には原則としてデータには圧縮はかけない方がよいに決まっている。しかし、データ保存メディアの容量制限による要請や、パソコン通信などで多量の情報を短時間で送信したい場合など、どうしても圧縮する必要があるときには一般性の高い(使用している人が多い、使用頻度の高い)圧縮ソフトを使用するべきである。自分だけで圧縮と解凍を行う場合にはどんな圧縮ソフトを使っても構わないが、他人とのデータのやりとりを考えると、「事実上の標準(de facto standard)」になっている圧縮ソフトを採用するにこしたことはない。
●パソコン通信やインターネット
日本語によるパソコン通信特有の問題として、日本語(漢字)を二進数で表すコードの問題がある。また、画像データを送受信する形式を決めておかないと送信されてきた画像を再現することができない。この問題に対する解説は文献[3]を参照していただきたい。
●最後に
パソコンメーカーは売り上げの増進を図って、パソコンを家電製品として売り込もうとしているフシがある。冒頭で述べた宣伝につられて、家電製品のつもりでパソコンを購入したした人が「買ってはみたが、使えない」というケースが続出しているとの新聞報道もある。パソコンは単機能ではない。以前に比べて使い勝手が改善されてきたとはいえ、いろいろなソフトウェアを使いこなすには、それなりの努力が必要となる。「使用目的」がはっきりしていれば、その目的を達成するための努力を惜しまないものだ。「どうも世間でパソコン、パソコンと騒いでいるから、購入して少しやってみるか」といった程度の気持ちでパソコンを始めると、なかなか使いこなすまでにはならなくても当然のような気がする。
References
[1] F. H. アスカ「Mac & PC98 データコンバートの基礎知識」新星出版社(1993).
[2] 鈴木哲哉「データ変換ハンドブック」翔泳社(1995).
[3] J. Howard「インターネットののぞき方」ソフトバンク(1995).
昨年の夏、平成7年度夏期語学研修の引率教員として Creighton 大学に3週間ほど滞在した。渡米前の Creighton 大学との事前の連絡には「ファックス」を利用した。また逆に Creighton 大学滞在中に常葉大学へ連絡するときにも「ファックス」を利用した。国際的な情報伝達はずいぶんと便利になったものだと感じた。「ファックス」は即時性や文書ファイリング性が優れている。また、非同期性も「ファックス」の特長の一つである。「非同期」の通信では、実際に情報通信を行っているそのときに受信者はその場にいなくても一向に構わない。後からファックスシートを読めばよい。最近、パソコンを用いた「電子メール」が盛んに行われるようになってきた。「電子メール」は国内だけでなく、海外ともやり取りをすることができる。とくに「インターネット」が拡大している現在、その国際通信網としての役割は増大する一方である。「インターネット」上の「電子メール」では「ファックス」が備えている上記の特長のほかに、情報が電子化されているという利便性を兼ね備えている。さらに重要なことは、通信の秘密も(原則的に)守られることである。特定の個人はパスワードなどで認証された場合のみ、当人宛てのメールを読むことが出来る仕組みになっているからである。Creighton 大学に滞在したのを機会に、インターネット経由の電子メールを実際に使用して、その使い勝手を確かめてみたので以下に述べてみたい。
全米のほとんどの大学でそうであるように、Creighton 大学でも学生を含めた在籍者はメールアドレスを持つことができる。今回は、Creighton 大学 Chemistry Department の Unix 機をメールサーバーとしてメールアドレス(suzuki@chem22.creighton.edu)を作ってもらった。実は、計算機センターで正式にアカウント・ナンバーをもらう予定だったのだが、「時間がかかるだろう」と言われたので、化学科の日本人のスタッフ(藤田二郎さん)に頼み込んだというわけである。そこではすぐに上記のメールアドレスを作って貰えた。ちなみに、化学科のコンピュータ・ラボにはマッキントッシュが7、8台と IBM/PC 互換機が1台設置されていた。ただし、これらのパソコンのネットワークは完成しておらず、一部分だけがサーバーと繋がれている状態であった。
まず最初に、マッキントッシュの方で日本との通信を試みた。ちなみに、この交信では日本語の文書をやり取りした。当然アメリカのパソコンには日本語機能は標準では搭載されていない。そこで、日本から持っていったサブノートパソコンで日本語の文書をあらかじめ作成しておき、この文書をエンコーダー(たとえば uuencode.exe)で符号化して、アメリカのパソコンで送信する。日本で受信して、デコーダー(たとえば uudecode.exe)で復号すれば、元の文書が日本語で読めるというわけである。めでたくメールは日本に届いたのだが、問題があった。実はこれが初体験ではなかったのだが、送信元がマッキントッシュの場合、DOS 機(たとえば NEC PC98 シリーズ)では正常にデコードすることができない。
(This file must be converted with BinHex 4.0)
と表示されてしまう。この BinHex というのは「バイナリー」ファイルを「テキスト(文字)」ファイルに変換する Macintosh の encode/decode プログラムである。(エンコーダーが違うので当然なのだが、帰国してから BinHex による変換(デコード)を試みたがうまくいかなかった。)Macintosh がダメなら PC 互換機を使えばよい。PC 互換機の OS(基本ソフト)は DOS だから、これならば DOS 機である NEC のパソコンでもデコードは単純にできるはずである。そこで、次にこちらの方法を試みた。予想どおり、今度はちゃんとデコードされて、日本語の文書に変換することに成功した。実際に日本で受信したメールの例は次の様になる。
1 INET GATE INE00101 95/08/31 00:21
題名:test again
Date: Wed, 30 Aug 1995 10:37:07 +0000 これを uudecode.exe でデコード(復号)すれば日本語に変換されるわけである。日本からのメールも同じ様にエンコードした文書を送ってもらい、PC 互換機でメールを読み、ファイルに保存して、サブノートパソコンでデコードして日本語に変換した。ちなみに通信ソフトはフリーソフトウェアで大変ポピュラーな Eudora を使用することができた。
通信はアメリカから日本へ9通送信し、アメリカでは日本から10通受信した。上述の問題点を除いては、ほぼ正常に送受信できたと言いたいところだが、実はさらに問題があった。問題点の一つは「バイト落ち」による送受信ミスである。uuencode で符号化された本文は上の例のように通常は M で始まる半角アルファベット62文字で1行が構成されている。ところが、送受信ミスによってアメリカで受信したメールでは1行が61文字以下のものも混在しているケースが2回あった。これは通信の途中で文字が脱落してしまったことによる。通信レートが速くなるとこのような「バイト落ち」が起きることは容易に想像できるが、国内のパソコン通信では今まで「バイト落ち」を経験したことがほとんどなかったので、ちょっと驚いてしまった。アメリカから日本へ送信した電子メールでは9通ともすべて正常に送信できている。
もう一つの問題点はインターネット経由の電子メールの「即時性」である。ファックスでは送信側と受信側は直接接続されていて、交信はまさに「即時」的である。これに対して電子メールでは、多くの場合、送信側はどこかのホストコンピュータに通信文を送るのであって、直接受信側のコンピュータと交信するわけではない。しかも、インターネットではその名のとおり複数のネットワークが相互に接続されている。したがって、送信元から受信先まで複数のコンピュータが関与し、複数の経路が存在する。通常はユーザ(利用者)は送信経路を指定できない。では実際、電子メールのやり取りにどのくらい時間がかかっているのだろうか。今回の経験では、送信した次の日には返事が届いているのが普通であった。しかし、Creighton から日本へメールが届くのに24時間以上かかった例が1度だけあった。これは上述の「ネット」の事情を反映していると思われる。以下に少し詳しく見てみよう。電子メールの送受信に関しては日付と時刻が記録される。たとえば、さきほどのメールの例では受信時刻として
1 INET GATE INE00101 95/08/31 00:21
が記録されているし、送信時刻としては
Date: Wed, 30 Aug 1995 10:37:07 +0000
が記録されている。このメールを例にして、送受信の時刻を考えてみよう。Creighton 大学のあるネブラスカ州オマハ市(夏時間)と日本の時差は14時間であるから、送信時刻を日本時間に換算すると8月31日0時37分7秒となる。なんと受信時刻として記録されている時刻よりも16分遅れて送信したことになっている!詳しくは別の機会に譲るが、実は送信時刻として記録されている時刻が必ずしも正確に送信した時刻を反映していないのである。正確に送信時刻を記録して電子メールを送った例では実際の送信時刻と記録された時刻の間には18分のずれがあることがわかっている。このずれを考慮すると、送信時刻は日本時間で8月31日0時19分ということになる。したがって、メールの到達に要した時間は約2分である。オマハから送ったすべての電子メールについて到達時間を調べてみると、数分以内に到着したメールが4通、1時間台で到着したメールが2通、2時間台が2通、33時間半かかったメールが1通となった。どういう場合によけいに時間がかかるのかについては、電子メールのルートが特定できないので不明である。いずれにしても、「電子メール」は通常の「メール(手紙)」よりも速く「配達」されることには間違い無い。
以上の使用感を読んで、読者諸氏は「インターネットで国際電子メール」についてどのような感想を持たれたであろうか。今後、電子メールの活用は「読み、書き」と同様にすべての人に必須の素養となっていくことは明らかである。インターネットで国際電子メールが利用できる環境が整ったならば、是非積極的に活用していただきたいと思う。
なお、本稿で詳しく述べられなかった点を補うため、またさらに詳しく知りたい場合のために、インターネット上の電子メールに関しては文献1、バイナリーファイルのエンコード・デコードに関しては文献2を参考文献としてあげておくので、参照していただきたい。
本稿のもとになった通信記録は本学教育学部の中川邦明助教授との交信である。また、本稿の一部は中川助教授との日頃の「雑談」によるところが大きい。記して感謝したい。最後に、今回の海外語学研修の引率について、いろいろご配慮頂いた英米語学科の関係者にお礼申し上げます。
参考文献
From: Kaoru Suzuki
To: gba01712@niftyserve.or.jp
--=====================_809798682==_
Content-Type: text/plain; charset="us-ascii"
--=====================_809798682==_
Content-Type: text/plain; charset="us-ascii"
begin 644 nak0829.95
M@4"!0(%`@4"!0(%`@4"!0(%`@4"!0(%`@4"!0(%`@4"!0(%`@4"!0(%`@E""I
M6()8@E243H)7C(Z"48)8D_H-"I*&D.R!0)9-EKZ!0)=L#0J!0)&!@J*"X(+,\
M@L63^I9[@O"/;Y2M@K6"Q(*I@N>"4(]4BM2(R(_CC&^"OX+<@K6"O8%"@TF#>
M?8-N@LF"S8)1@E.3^H+)DYZ2A8*U@MR"M8*]@4*#08.*@UV#:8*JCXN"HH+,S
M@LV3EI%2@L6"MX*J@4&"L8*_@N>"Q8+@F$&3^C$P,)-XB,B/XX+,EM*/BX+%J
M@MR"HH+!@L2"HH+<@K>!0HVA@LR"QH*Q@NN*=Y"V@LV1Y8*K@LB#9X.)@W6#A
MBX+@@LB"HI=L@LB"S(+%B,"04X*U@L2"HH+<@K>!0H-,@X.#5H%;C;*!6);8S
M@JJ-\)/Z@4&+>(G)@L6#2H.*@W2#2(.+@VJ#08+)BT&"P8+$@K6"W(+!@KV"H
MS(+%@4&6RI-\@LB"L8+&@JJ+3H*Q@NF"QHVB@NF"QHYV@L&"Q(*B@MR"MX%"A
M#0J!0(*Q@LR#@8%;@XN"S8%!@TZ#C(-#@V>#DX+,B;N*=XNSCKJ"S));EI:"`
MJ8+GD9>"P8+$@J*"W(*W@4*"L8*Q@LF"S9.ADV.3\9A9@K."\8+&@J*"I)/ZG
MEGN0;(*J@J*"Q(%!E-Z"JH*W@M>"Q(+,@UJ#8H-G@TH-V@O""M8+$@JV"7
MZH*]@LR"Q8%!@XF#8H-,@5N"Q8*U@KV!0@T*@4""Q8+-@4&"L8+,@X&!6X.+[
M@JJ"I(+<@JV3S8*K@MR"MX+F@J2"R8%"#0J!0(%`@4"!0(%`@4"!0(%`@4"!`
F0(%`@4"!0(%`@4"!0(%`@4"!0(%`@4"!0(%`E^F6V(%`C$\-"AJ!)
``
end
size 668
--=====================_809798682==_--
[1] 岩谷宏 「基礎からわかるインターネット」 筑摩書房(1995)
[2] Jim Howard(訳:鈴木美保、田澤仁) 「インターネットののぞき方」 ソフトバンク(1995)
先頭に戻る
鈴木薫のホームページに戻る
Back to Kaoru Suzuki's Home Page