1.ブラウンの発見
大きさ1ミクロンほどの花粉から出た微粒子が,このような
無秩序でじぐざぐした運動を止むことなく絶えずしています.
ブラウン運動とは,1827年,イギリスの植物学者ロバート・ブラ
ウンが,植物の受粉の研究から発見した粒子の運動のことです.
花粉を水に浮かべておくと,花粉は水を吸って破裂します.その
ときに花粉の中からたくさんの微粒子が出てくるので,その微粒子を顕微鏡で観察しま
した.すると,その微粒子がふるえるように動いているのが観察されたのです.
ブラウンは,初めはこの運動は生物の活動だと考えました.花粉
の中の微粒子なのだから,生命活動を行っていてもおかしくないと思ったのです.それ
ぞれの粒子が勝手気ままに運動するその動き方から,水の動きに引きずられているとは
思えません.そして,古い標本や石炭などの死んだ植物からもこの微粒子の運動が観察
され,永遠に不死である「生命の原子」が存在し,それが運動する現象であると考えら
れました.
ところが,生物につながる有機物以外,岩石や金属からも微粒子
の運動が観察されました.そこでもう,この運動は特定の微粒子,「生命の原子」によ
るものだとは考えられなくなりました.
花粉が水を吸って破裂して出てくる微粒子の運動は,ブラウンよ
りも100年ほど前にすでに気づいていた人がいますが,この運動の普遍性を確立したブ
ラウンの名にちなんで,ブラウン運動と名づけられました.
その後,ブラウン運動の研究が進み,ブラウン運動は水中だけで
なく,他の液体や気体中でも起こることがわかりました.そして,20世紀に入ってから
のブラウン運動に関する研究は,ついにブラウン運動の仕組みを解明し,さらに原子の
存在する証拠を見つけ出すこともできました.
「生命の原子」が存在しないならば,微粒子が運動する原因はい
ったい何なのでしょうか.ブラウン運動のシミュレーションをふまえながら,考えてい
きましょう.
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