3.ブラウン運動の仕組み

ブラウン粒子にはどのような力が働いて運動しているのでしょう か.

青い球はブラウン粒子(ブラウン運動をする微粒子),小さな点は 空気(あるいは水)の分子をあらわしています.空気の分子は熱運動によって飛び回っ ています.微粒子の大きさは”小”のままにして,”温度”のスライダーを左に動かし てみましょう.空気の分子の動きが遅くなり,ブラウン粒子に衝突している様子がわか ります.

このように,空気の分子が様々な方向から様々な速度で衝突する ことによって,ブラウン粒子は規則性のない乱雑な動きをします.この動きがブラウン 運動です.したがって,先ほどの映像で,水や空気の分子の衝突によって引き起こされ る微粒子のブラウン運動が観察できたということは,水や空気の分子の運動を間接的に 見ていることになります.

温度が高くなれば,空気の分子の熱運動は活発になります. ”温度”のスライダーを右に動かして,温度を上げてみましょう.すると,空気の分子 は激しく飛び回るようになり,それにともなってブラウン粒子も動きが活発になりま す.空気の分子が勢いよく衝突するので,ブラウン粒子が突き動かされる量も大きくな るのです.つまり,ブラウン運動は温度が高いほど活発になるということがわかりま す.

”温度”を適当な値にして,今度は微粒子の大きさを”中”にして みましょう.微粒子の大きさが”小”だった先程より,ブラウン粒子は活発に動きませ ん.微粒子が大きくなると,質量も大きくなります.重たいものを動かすのには大きな 力が必要となりますから,空気の分子がブラウン粒子を突き動かす量は小さくなりま す.また,ブラウン粒子の表面積が広くなったことにより,一度にたくさんの空気の 分子が様々な方向から衝突してきます.すると,それらの力が打ち消しあってしまう ので,ブラウン粒子が受ける力は小さくなります.このふたつの理由のために,ブラ ウン粒子が大きいとブラウン運動が起きにくくなるのです.微粒子の大きさを”大”に してみると,ブラウン粒子はほとんど動かなくなります.つまり,ブラウン運動は微粒 子が小さいと活発であるということがわかります.

以上のことをまとめると,ブラウン運動は

また,その性質としては,

ということがいえます.

これらのことをふまえて,次に,ブラウン運動がどのように振舞 うのかを1個のブラウン粒子のシミュレーションで見てみましょう.


補足:

ブラウン運動には,上記のことも含めて次のような性質がありま す.

  1. ブラウン運動は,微粒子の並進運動(位置を変える運動のこと)と回転運動の 組み合わせから成り立っているが,全く不規則であるために,いくら拡大してみても ジグザグ折れ曲がった軌道を描き,軌道に接線を引くことができない.(これを数学の ことばで言うと,「いたる所で微分不可能な曲線である」となる.)
  2. ふたつのブラウン粒子が粒子の直径ほどの距離にまで接近しても,それらは 互いに全く独立なブラウン運動をする.この性質は,ブラウン粒子が水の局所的な流れ につられて動くのではないことの証拠になっており,対流や蒸発,局所的な温度差など が運動の原因ではないことを示している.
  3. 微粒子が小さいほど運動は活発である.
  4. ブラウン運動は,微粒子の濃度とか組成とかによって振る舞いが変わることは ない.
  5. 微粒子を浮かべる流体の種類がどのようなものであっても,ブラウン運動は見ら れる.ただし,流体の粘性が小さいほどブラウン運動は活発になる.
  6. 温度が高いほど分子が微粒子に衝突する速さの平均が増すので,ブラウン運動は より激しくなる.(温度が上昇すると,流体の粘性率が著しく減少することによる二次的な効果もある.)
  7. ブラウン運動は時間が経っても,弱まったり止まってしまったりすることは ない.
  8. 微粒子が1個だけしかない場合でも,その1個の微粒子はブラウン運動をして いる.(これは,ブラウン運動が微粒子どうしの衝突によるものではないことを示して いる.)
  9. 強い光を当てても,磁場をかけても,プラスとマイナスの電極を水に差し込ん でも,ブラウン運動は影響を受けない.(この事実は,ブラウン粒子が外からの原因に よるものとする説や,ブラウン粒子が,本来電気を帯びたものであるという説を否定し ている.)

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